PESTICIDE-free

 

 具体的な例をご紹介すると…

種の処理。

 私たちは、病気の予防として、籾種をお湯だけで殺菌。
慣行栽培では、化学農薬2種を混合して行います。

 種を撒く土が異なります。

 無農薬栽培では、焼いただけの清潔な土(焼土)に有機肥料を混ぜたものを用意。
苗は赤ちゃんの頃から、有機肥料を自分で分解して吸収する練習を行っていきます。

 慣行栽培では、専用の培養土を使用。
苗にとって効率よく栄養が吸収しやすい化成肥料と、土壌の水分分布を均一にするため、撥水効果を弱める界面活性剤が含まれています。

 話が逸れますが、慣行栽培方式(化成肥料)で育てた苗を、有機栽培方式(有機肥料)の田んぼで育てても、上手く成長しない理由は、ご想像が容易いかと思います。

 人間の子供同様、幼稚園児がいきなり小学校にはついていけません。
(網本先生は、これに気付くまで6年間失敗続き。米作りで無収入だったとか…今や20年のベテラン!)

種を撒く時期も、育てる環境も異なります。

慣行栽培での苗づくりは、3月下旬。桜の蕾が膨らんだ頃、各家庭の庭先で種まきがスタートします(3月20日)。
その後、ビニールハウス(25度)の中で育苗が行われ、3週間程で稚苗サイズ(2.5葉)になってから、田植えが行われました。
(ご近所さんは、4月9日、遅い方でも4月20日に完了)

 私たちは、4月7日に種まきをし、田植えは5月21日。
成苗(4.5葉)まで育てるのに、1か月以上じっくりかけました。

 理由は、露地で栽培し、外気に当てながら、人間が夏に向かって暑さに体を段々と慣らしていくのと同じように育てる為。
並びに、田植え後の除草管理を軽減するため、稲を植えた後に「深水管理」という技法を用いる為です。

 大規模稲作農家は、限られたスペースで効率よく、回転率を上げる苗づくりの技術が必要となります。
反面、デメリットになってしまうのが、稲は急いで体を作ろうとするあまり、細胞壁が薄くなる。
ひょろひょろっと(徒長)してしまうのですね。

 さらには、ぬくぬくと25度のハウス内で育っていたのに、いきなり春先の低い水温と気温の田んぼに放り込まれることで、ストレスが発生。
根が土に活着するのにも時間がかかり、新しい環境への適応するまで生育が滞ります

 デリケートに育った苗には、田んぼという大自然の中でも生き残れるように、病気や害虫から守る農薬で守ってあげます。
 しかし、これがまた癖になるというか…。元来、稲には自分を病気から守るためのバリア機能が備わっているのですが、農薬は稲にピタッとくっつく必要がある為、界面活性剤でそのバリアを破壊します。
強い洗剤を使い続けて、手荒れをした経験がある方は、お分かりいただけると思います。使用を止めない限り、改善されませんよね。

 農薬がずっと残り続けていても心配になりますが…、JCPA農薬工業会のHPによると「農薬は、降雨により洗い流されたり(どこへ行くのでしょう?)、太陽光や微生物の分解により短期間の間に減少・消失。また、吸収された農薬成分は植物体内で分解されて減少する」とでも紹介されおり、個人的にはもののあわれを感じます。

 厳しく育てた有機栽培の苗たちは、というと…。

 外気に体を慣らしながらマイペースに成長。
移植する時には田んぼは20度を越え、心地よい温度。
すぐに根を活着させ、ぐんぐん土から栄養を吸収していきます。

 並びに、田植え前には水を1か月間張っておき生き物を呼び込んでおくのですが、農薬を使用しないことで、益虫をはじめ様々な生き物たちがたくさん住みつきます。彼らが動き回ると、水が濁り、遮光となり、雑草の発芽を抑制します。